院長の「JoJoブログ」

北杜夫さんのご冥福をお祈りいたします

2011-10-27 11:26:18投稿

読書が趣味といえるほど、いつも本を読んでいるわけではないが、ほぼ毎晩、何等かの活字に接してから眠りにつくのが習慣だ。
ただ、横になってから読むと、すぐに眠くなるので、たった数行読んだだけで、寝付いてしまう夜も多く(不眠症の患者さん、ごめんなさい)なかなかたくさんの本を読破できない。
走るようになってからは、マラソン関連の本で1日をおわるのが、当たり前になっていたが、ネタもつきてきたので、最近はまたランニングと関係のないものも読んでいる。

振り返ってみると、私の本好きは、小学生のころからだ。小学校中学年ごろから、学校の図書館の棚を片っ端から読破していくのを喜びにし、その当時は、アルセーヌルパン、シャーロックホームズ、江戸川乱歩などの探偵ものがお気に入りで、とにかく、一つのシリーズを1巻から最終巻まで読みつくさなくては気が済まなかった。

中学に入って、私を虜にしたのは、”どくとるマンボウ”シリーズだった。初めて読んだ「どくどるマンボウ航海記」が、あまりに面白く、それからというものひたすら北杜夫作品を読みあさった。私が北さんの本に出会うまでに世にでていたものは、全作品読んだし、1980年以降に出版された作品は、すべて、初版本を購入した。中学、高校時代の小遣いの半分以上は北さんの本につぎ込まれたのではないかと思う。今度、北さんの新版が出るという本屋のチラシをゲットすると、それを学校の机の上に置き、こっそりと授業中に眺めては、発売日を楽しみに待っていたほどだ。
”どくとるマンボウ”シリーズだけでなく、「夜と霧の隅で」「楡家の人びと」など純文学作品も大好きで、国語の勉強をほとんどしたことがないのに、ある程度国語で試験の点数が稼げていたのは読書のおかげだったのではないかと思う。

北さんは、精神科医兼作家であったため、自分も、精神科医になろうと決めていた。小説はかかなかったけれど、日記をかねたわけのわからない長ったらしい文章を毎日のようにノートに書きため、医者になったあとは、いつか自分の書いたものを世に出そうと、夢見る高校時代を過ごしていた。
実際、医学部に入ってからも、大学6年生の夏までは、精神科医になるつもりでいた。成人してからは、北さんとも、読書そのものともかなり遠ざかってすごすようになり、最終的には、いろんなことがあって、婦人科を選ぶことになってしまったが・・・

昨夜、その北杜夫さんが逝去されたことを知った。テレビのニュースを見た瞬間、息が止まってしまった。
自分の中学・高校時代の思い出がよみがえり、いろんな作品のいろんなストーリーが走馬灯のように私の中を駆け巡った。現在も、クリニックの院長室の本棚には、小遣いをはたいて買った色あせた北杜夫作品が並んでいる。ひっこしをするたび、多くの本を処分してきたけれど、北さんの本だけは、私の青春時代そのものなので、ずっと大事にしまってある。
謹んで、北さんのご冥福をお祈りいたします。