院長の「JoJoブログ」

毅然として死ねない人よ。それでいいではありあせんか。

2014-07-30 22:09:20投稿

故遠藤周作氏の著作から編んだ44篇のエッセイ、今年1月初版の「毅然として死ねない人よ。それでいいではありませんか。」を読んだ。

以前、このブログにも書いたように、私は、中、高校時代、北杜夫氏の大ファンだったが、その北さんと親交の深かった遠藤さんの作品も好きだった。有名な代表作「沈黙」をはじめ、狸狐庵先生としてのエッセイも、かなりの数を読んでいるのではないかと思う。
クリスチャンでない自分が、カトリック系のミッションスクールに通っていたので、キリストの教えの裏側を描いたような、クリスチャンである遠藤さんの作品には、思春期の私に結構訴えるものがあって、「海と毒薬」「わたしが・棄てた・女」などは、何度も読みかえしていたのを思い出す。
成人してからの私は、すっかり読書から遠ざかっていたし、医者になってからは、たぶん、1冊も遠藤周作作品は読んでいない。というか、私が医者になって数年後に亡くなられたので、あまり、新たな作品も出ていないと思う。

馬鹿げた話ではあるけれど、数年前に、コンピューターウイルスによる事件が多発し、一時期、「遠隔操作」という言葉が、ニュースや、新聞などで、頻繁に登場したとき、どうもその「遠隔操作」という漢字が、ぱっと見で「遠藤周作」に、私には、見えてしまった。やっぱり、自分は、遠藤ファンだったんだなあと、高校時代を懐かしむ気持ちにはなったものの、手持ちの遠藤作品を読み直すほどではなかった。
最近、本屋で偶然、この遺稿集が目に入った。すでに没後18年が経過しており、どういういきさつで、今回の出版になったのかはわからないが、本屋でみた瞬間、「これは読まなくては」と即購入。30年ぶりくらいに遠藤さんの文章を読むことになった。

文章は、晩年の1990年前後に書かれたものが大半で、私が高校生までに読んだことのないものばかりだった。大病を患い、病床で書かれたものもあると思われるし、”人生の意味の深さが感じられる44篇”と帯にあるだけに、人生とは、人間とは、愛とは、死とは・・・という重い内容。だけど、遠藤さんらしい、人間は弱いもの、挫折、後悔があって当たり前という優しさに包まれた文章は、ほっとするというか、こんな私でもいいんだ、と思わせてくれるものがあり、嫌なことがあった時にいつもそばに置いておきたい本だなあと感じた。そして、遠藤さん自身が、老いと病の苦しみの中で、確かに近づいている死を想いながら書かれた文章が多く、私も、こんな気持ちで最期をむかえられたらと考えさせられた。30年以上前の思春期の自分が読んでいたら、少し反発してしまったかもしれない宗教的な部分もあるけれど、私自身があの頃より30年は死に近づいているので、受け入れられるものが多いような気がした。

この本の中で私の心に響いた一文。

  ~~本当の愛とはきれいなものに心ひかれるということではなく、自分の選んだ人やものがどんなにみにくくなっても、それを棄てないことではないかと思う。~~