院長の「JoJoブログ」

マスクあれこれ

2020-04-29 19:18:46投稿

朝から晩まで、テレビをつけても、パソコンをひらいても、買い物に出かけても、コロナの文字を見ない日はない毎日、日本中の人々が明るく楽しくなれない中、何とか我慢が美徳とされてきた日本人の力で乗り切れると信じるしかないなと思う日々。
コロナ、感染対策、などの言葉と並んで、マスクという文字もあちこちで目にする。
ドラッグストア、スーパーなどの小売店で、マスクが売られているのを見ることはほとんどないし、手芸店などでは、手作りマスクの材料となるガーゼ生地、ゴム紐は、どこの店に行っても、入荷未定の張り紙。百均ショップをのぞいてみても、空洞と化した棚の商品名を見てみると、手芸用品コーナーのゴム紐だ。
都知事の小池さんをはじめ、国会議員にも、手作りマスクをしている人もいて、マスクは白で、ガーゼ生地なんて常識はもうどこかに行ってしまったみたい。その分、どんな生地のどんなマスクをつけていようと、変な目で見られることもなく、逆に、マスクをしていなければ、白い目で見られる世の中になってしまった。
けれども・・・どんな生地だろうと、口を鼻を覆っていれば、少なくとも、唾液の飛散を防ぐことはできるので、マスクの意味がないことはないけれど、布やガーゼ、その辺の使い捨てマスクではウイルスを吸いこまない、すなわち予防にはならないことは医学的な常識。
じゃあ、どんなマスクなら予防になるのかというと、本気の予防にはN95という基準を満たしたものだけと言われている。このN95マスクについては、私自身、使ったことはないけれど、通気性が悪いのできちんと使用すると20分で息苦しくなるそうだ。
医療の現場で、これまで普通に手術で使っているのは、サージカルマスクとよばれているけれど、何がサージカルで、何が一般のものなのか、正直いってさっぱりわからなかった私。
私が勤務医だったころ、(たぶん現在も)手術の時は、当然、1手術、1マスクで、1日使用することなんかないこともあり、手術室に入るときにつけるマスクには、4本のひもがついていて、頭の上でくくるタイプが普通で、耳にゴムをかけて使った記憶はない。手術でマスクをつける理由は、術者が手術中にしゃべるので、その時に出る飛沫が、術野に落ちないようにするため。基本的に、手術を無菌で行うのが目的であり、術者の身を守るためではない。
手術室における、清潔、不潔の概念でいくと、術野は清潔なので、術野にたつ数人以外は、不潔領域で仕事をしている。麻酔科医は不潔領域だから、私が研修で、麻酔をかけていたころ、時々手術野に近寄りすぎて、怖い術者のドクターから「そこ、不潔になる!!」と怒鳴られたことが何度かあるのを思い出す。
というわけで、サージカルというのは、手術の、とか、外科の、という意味なので、手術室で使う4本ひものマスクをサージカルマスクというんかいなと適当に思っていたが、どうもそうではないらしい。
広義には、手術室で使うものをさしているのは間違いないが、普通、手術室に置いてあるものは、4本ひもとは関係なく、どうやらBFE95%以上というサージカルマスクの基準を満たしたヤツのようだ。これまた、BFE95%というのも素人にはなんのこっちゃだけど、BFEというのは細菌ろ過効率というもので、細菌を含む径4~5μmの粒子が除去された割合とのこと。N95については、ろ過するだけでなく、マスクと顔面のすきまから細菌が侵入しないようになっている構造も含まれている基準なので、また別の話。
とはいえ、ドラックストアなどで、花粉やインフルエンザ対策として、売られている一般向けのものにもBFE95%以上と表示されているものもあり、結構、サージカルマスクという言葉だけで判断するわけにはいかないようだ。これまで、そこまでマスクについてあれこれ考えることもなかった私は、今回、いろいろ調べてみて新たな知識を得ることになった。
うれしい発見というほどのことでもないけれど、今まで知ることもなかったマスクのあれこれを知ることができたのは、コロナ禍の暗い毎日の中では、ちょっとは明るい話かも。マスクに限らず、テレワークではんこ文化が見直されるようになったり、これまで、あまり考えたこともなかったことを知ったり、調べたりすることになった人は多いと思うので、小さなこと、ものをみつけて、少しでもポジティブ感情を持つようにして、何とか感染が収束する日まで、メンタルを維持していければいいなと思う。