院長の「JoJoブログ」

2020-05-12 14:05:58投稿

数日前、国内最後の桜の開花宣言が北海道の釧路、稚内地方で発表された。
桜の開花宣言というのは、各地方気象台が定めた標本木に5~6輪の開花が認められた時にされるもので、大体その地方の本格的な春の訪れを示すものだ。
だけど、考えてみるに、日本以外で、こんな公の開花宣言なんていうものが存在する国があるのだろうか?近所の人が「庭の花が咲いたよ」というわけではなく、国の機関である気象庁が発表するのだ。
調べてみると、農業関係で、大正時代の終わりごろから桜の開花を調査することはあったようだが、開花予想などが始まったのは、昭和26年からで初めは関東地方だけだったらしい。昭和40年からは沖縄以外の全国になり、桜前線という言葉も、このころから使われるようになっている。ちなみに、桜前線という言葉は、マスコミが作った造語だ。ただ、開花予想については、2010年には、気象庁が発表することをとりやめ、民間の気象会社が独自におこなうようになったとのこと。
まあ、いずれにしても、単に、花が咲くだけのことに、かなりの税金がつぎ込まれているのは間違いない。国内には、もっといろんな種類の花の咲く樹木があるのに、なぜ、そこまで、日本人はこれほど桜にこだわるのだろう。

現在、かなりの話題になっている9月入学の問題。そもそも4月から新年度という制度も100年くらい前にできたらしいけれど、この制度を作った当時の政治家たちの本心を知ることはできないとはいえ、やっぱり、冬のあと、過ごしやすい季節がきて、桜が咲くころに別れと出会いの思い出をつくり、新しい年度のスタートというのは、きっと万葉集の時代から続く、日本人の四季を愛でるDNAがそう決めさせたのではないかという気はする。
がんで闘病中の人が「来年も桜が見たい」とか、合格発表の電報が「サクラサク」であるとか、これらの「桜」の行間にこめられたフィーリングはもう、日本人以外の人種には説明のしようのないものだと思う。

その”四季”が、地球温暖化の影響で、だんだん、境目がわかりにくくなってきている今世紀、今年の桜は、暖冬の影響で、鹿児島では、かなり開花が遅れてしまった。桜は夏に硬いつぼみを付け、その後寒い冬を過ごさないと、つぼみが膨らむタイミングがわからなくなるそうで、時々、春でもないのに桜が・・・というニュースを目にすることもある。
そして、わがクリニックに去年の3月から登場した鉢植えの桜。1年前の花が散ってから今日の日まで、園芸店の指示通り、毎日水をやり続けていた。数か月は、院内においていたけれど、外に出して風に当てたほうがよいといわれ、夏以降は、ずっと勝手口の外に置いていた。細い幹にカビがはえ、葉っぱは全部なくなって、みすぼらしい姿で半年以上経過していたので、もう死んでるのかなとおもって、冬場にまた園芸店の方にみてもらったら、まだ生きているといわれ、水やりは継続。そして、3月になり、つぼみが膨らんでくるのかなという期待のもと、毎日眺めていても、何の変化もなし。4月になって地域の桜が満開を迎える中、花見に行けない今シーズン、せめて、鉢植えの桜が咲いてくれればと期待しつつも、変化なし。結局、1年間、1日も欠かさず水をやったのに、2年目に咲かせるのは無理だったのだとあきらめていた4月下旬、小さな緑の葉が息吹き始めた。花は咲かなくても葉っぱがでるのかしらんと思っている間に日に日に葉の数は増え、ステイホーム週間が始まったころに、なんと1つつぼみが出てきて、ついに花が咲いた。その日、札幌では満開というニュース。鉢植えの桜に向かって、「あんた、北海道出身?」

そして、今、もう一つの枝からまた新しい葉っぱが出始めているけれど、二つ目のつぼみは見当たらず。枝によって葉の出る時期が2週間ずれていて、全く四季の変化を会得できない、わがクリニックの桜。もしかして、9月入学の噂をきいて、9月ごろに咲くつもりなのかもしれない。

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