院長の「JoJoブログ」

ワクチンのはざまで

2021-05-13 22:49:15投稿

新型コロナの第4波の真っ最中、防府市内も陽性者が増え、近場にさえ、安心して出かけることもできないゴールデンウイーク明けとなった。
医療従事者として、ワクチンの先行接種を受けさせてもらい、また、集団接種会場でも医師会員として、ささやかなお手伝いをさせてもらう中、マスコミ報道、国会の答弁、ネット記事など、あふれんばかりの情報をいやおうなく目にしてしまう。テレビには、色んな医師が登場して、勝手なことを言っているけれど、変異株が主流となって、危機感が強まる中、現場で患者さんを診ていない医師や感染症の専門医でない医師の出番はかなり減ってきたような気がする。
芸能人、スポーツ選手、政治家、アナウンサーにしても、何だか知ったかぶりなこと言ってるなぁと思わせられる意見も多い。
そして、自分自身も、医師の一人として、知り合いなどに質問されることがあるけれど、実際、未知のウイルス感染症に対して、どれだけ真実を伝えられるのか、呼吸器疾患に携わったこともなく、微生物学、免疫学、疫学などの研究なんて全く遠い世界の私が意見を言うのは、あまりにも無責任だというのが、正直なところだ。
ただ、ネットの怪しい記事や、菅総理の質問の答えになっていない対応を聞いていると、自分なりに、正しい知識を得たいとは思うので、私の中で、信頼できると思われる著書を何冊か読んでみた。
「専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話」 忽那賢志 (幻冬舎新書)
「新型コロナとワクチン 知らないと不都合な真実」峰宗太郎・山中浩之 (日経プレミアシリーズ)
「丁寧に考える新型コロナ」岩田健太郎 (光文社新書)
「理論疫学者・西浦博の挑戦 新型コロナからいのちを守れ!」西浦博・川端裕人 (中央公論新社)

とりあえず、ワクチンをうたれて、腕が痛いのを我慢しつつ思うには、意見というものは、色々あるのが当然で、最終的に自分の意見を持つためには、知識が必要で、誰が言ったのかではなく、理論的に、客観的になりたつ意見を信じるということだ。いわゆる肩書に騙されたり、マスコミに踊らされる事が多い気がするのは、コロナ禍で気になっていた。しかし、上記の著書の著者たちは、データ、科学に基づいて意見を伝えているので、読み終わってみると、何となく、自分の中で、少し新型コロナを理解できてきたように思う。
今後、ワクチン接種が拡大して、いずれは、パンデミックは収まるのだろうけれど、これが、今年なのか来年なのか、5年後なのか、誰にも分らない。ワクチンだって、中和抗体がいつまで効果あるのか知る由もない。
ただ、読んだ本の著者たちは、専門家として、政府にも提言されている方たちで、相当、この1年、苦労をされているんだということは理解できた。”8割おじさん”と呼ばれた、西浦教授に至っては、殺人予告までされて、一時期、警備の人を付けていたこともあるということで、本当に、頑張っておられるということを知ることになった。本文にも出てくる、政府分科会の尾身会長の努力、人間性にも触れられていて、テレビのニュースだけでは知りえなかったことを知っただけでも、読んでよかったと思う。
そして、重症患者の治療に奔走している方たちと同じ医療従事者のはしくれとして、せめてワクチン接種くらいには協力していかなくてはなと気を引き締めている。